絶望

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東北出身であったり、家庭環境に恵まれていなかったりはともかく、犯人は成人して社会の一員だったわけである。
しかし、今回、このような事をやらかした。
特に気になったのは、彼に関する失職の事であった。
前に、店じまいするビデオ屋「フォーリング・ダウン」という映画を100円で買ったせいか、
どうもこの事件と重なる。
これは失職した男がブチ切れて暴れまくった挙句に死ぬという胸が痛い映画だが、
細部はともかく、なんとなく似ている気がする。

犯人加藤は地方都市・静岡の職場で日当4000円という明日の見えない日々を送っていたという。
さらに涙をそそるのがツナギを隠されるという陰湿な嫌がらせがあったり、クビを告げられていたという同僚の証言があったりと・・・真偽は不明だが。

映画ではこういう細部は描かれていないが、妻と離婚していたり、娘に会えなかったり、渋滞にイラついたり、コンビニ店員にバカにされたりと激発する条件が積み重なって行っている。
どんどん怒りの原因が軽くなっていっているのが特徴だ。

・苦悩
現場の派遣会社でどのような事が積み重ねられていったかは不明である。企業も明らかにしないだろうし、派遣社員が居なければ成り立たない社会もそれを求めないだろう。おそらく派遣社員たちですら、解明を望んでいない。
とっとと忘れてもらいたいのだ。

思えば、加藤智大はとことん孤独である。
彼を理解する人は誰も居ない。雇用主も、同僚も、恋人もいないし、両親とも疎遠であったという。
彼を認めてくれる人は誰もいないのだ。
そんなら仕事で自分の存在理由を証明し続けるしかないが、
それも上手くいかない。

彼は恋人を求め続けたと言うが、それに値する女性はいなかったらしい。
それではと二次元の世界にせめて心の慰めを求めたと言うが、ポコチンはともかく、この麻薬が心にさらなる傷を与えたのは間違いなさそう。
秋葉原にエロゲを売却に来たと言う話だが、これも安く叩き買われたのだろうか。
彼は真面目な性格だったと言うから、エロゲにのめりこむ哀れな自分を呪ったに違いない。

・これは他人事ではない
全てが上手くいっていない彼はぶっ壊れてしまったが、
これからさらに景気が悪くなると言われる中、
似たような事件が起こりそうな悪い予感がする。
加藤のような人間は、ちょっと町を見渡せばどこにでも居そうだ。
ただブチきれるきっかけが、個人個人違うだけで。

心の傷は誇りを取り戻す事でしか癒せない。
誇りを取り戻すには自分の存在理由を他者に認めてもらわねばならない。

社会が病んでいるとして
この病巣を取り除くのは容易ではない。

今回、派遣会社の日研総業が行ったとされる陰湿な嫌がらせが無ければ、
温かみのある、人間的で、残酷でない対応をすれば、
下層世界の元締たちも背筋を凍らせる事はなくなると、思う。
個人の問題や責任は当然あるとしてもだ。

もっとも平和と繁栄の代償として割り切るのもいい。
自己解決能力に肉体的・社会的な死を選びやすい日本人にはこういう安易なペシミズムが
似合ってるのかもしれないしなっ。

日本人もいつかは成長するということを願って。

つー投稿。