白旗ではない


日本人に失われた勤勉さを現在唯一保っているとおぼしき市民団体の活動が発端らしい。
占領にも抵抗にも協力しない、勝手にやってくれ、というつもりでいるのだろう。
指摘されるべき点も多いのだろうが、この団体がそれにどのように答えているかきになる。

占領軍兵士の食料・物資はどうする。
敵軍からしたらせっかく占領したのだし、
例えば大阪を占領して恒久的な統治を行うのだとしても、いずれ徴発が行われるだろう。
一時的な占領なら、なおさらだ。

そして食欲の次は性欲が必ず来る。
各家庭、米や電化製品の次は女も提供せねばなるまい。
年頃の娘が居る家庭はどうするつもりか。
まさか女性の多い市民団体が兵士達の劣情を宥めてくれるわけでもないし、
いわゆる魅力的な女性が市民団体という組織に足を向けないのは現代の常識である。
この問題に対しては人権を擁護する以上、解決策はないように思える。
ポルノを製造し備蓄し、敵軍に振舞ったとして、性文化の違いを克服できるか疑問だ。
娘を隠せばイラクで米軍が行ったような血みどろの家庭訪問があるだろうし。
それにこの手の訪問は「テロリストの探査」の金言で簡単に正当化されそうだ。

それに占領軍兵士の士気についても一様ではない。
例えば外国軍が大阪を占領するとして、
そこに到達するまでに自衛隊と会戦を行うだろう。
台湾、沖縄、対馬海峡か、下関海峡か。
その過程で当然双方に死者が出る。
揚陸・撃破に成功した兵士達は復讐の鬼と化し、
無防備都市を略奪する可能性も否定できない。
世界最精鋭かつヒューマンライツアメリカ軍にでさえ、略奪発砲とは無縁でないのだ。
劣等感に苦しめられている野蛮国の兵士が血に酔えば、血と肉の雨が降ることも考えられる。

そして仮に日本が敵軍を打ち破り、国内にとりあえずの安定を築きえたとして、
無防備宣言をして自衛隊に協力しなかった都市の市民を、他の国民達がどうみるか。
裏切り者として処断せよとの声もあがるだろう。
そうなると、国が割れる。
例えば大阪規模の都市でそんな騒動が起きれば、ここは独立運動を起こすのだろうか。
日本人の統一性は簡単に崩壊するだろう。
だが応永の乱の時よりも堕落した河内和泉の人々も、独立派と日本派に分かれるに違いない。

となると独立派がさらに外国軍を招き入れる可能性も在る。
仮に大阪として、ここは瀬戸内海に通じる要衝でもある。
ここに外国軍が押し入り、大阪を保護国化したら、日本は再び武器を取ることになるだろう。

というわけで、国民大多数のことを考えれば、無防備都市宣言は有害である。
第二次世界大戦時のイタリアでは失敗した。
同戦争で沖縄の一部とフィリピンでは成功したそうな。
尼崎市議会も、政治の俎上に載せる前に、この宣言の歴史的結果の原因をそれぞれ突き詰めて、
宣言を出すメリット/デメリットを提示するべきなんだろう。

この問題に関する議論を活発にするためには、
無防備都市宣言を行っている都市付近で戦争が起きるのが最もよいだろう。
そこで調和が保たれるか、血が雨と降り注ぐか。

もしも前者であれば賞賛が浴びせられるだろうが、
この偉大な民主主義の世紀にそんな美徳が発揮される舞台はないだろうなあ。